Artist's commentary
ハイキック!
chatGPT:
――ち、ちくしょう……なんだ、あの女……。
見ろよ、ハリマオの体が……一瞬、浮いたぞ。錯覚じゃねぇ、確かに宙に浮いた。体重は百キロ超え、下半身も地面に根を張るタイプの大柄だ。それを、細い脚一本で? あり得ねぇ……あり得ねぇはずだ。
待て、落ち着け。力任せじゃない。あの踏み込み……助走は短いが、溜めが異様に深い。床を蹴る瞬間、踵じゃねぇ、母趾球だ。しかも軸足、内側にわずかに巻き込んでやがる。あれは……回旋を殺さずに、骨盤を一気に開くやり方だ。
くそ、あのガキ、基礎を知ってる。いや、知ってるどころじゃねぇ。体の使い方を“理解してる”。
見たか? 蹴り足の軌道。単なるハイキックじゃない。最初は膝を畳んで、途中から一気に伸ばしてる。遠心力を最大化するための“遅れ”だ。ムエタイの教本にも載ってるが、普通はここまで露骨にやらねぇ。隙が出るからだ。
だが、あの女は違う。上体が一切ブレてねぇ。肩線が水平のまま、視線も切れてない。つまり、バランスが完成してる。隙が……存在しねぇ。
おいおい、嘘だろ。インパクトの瞬間、音が二重に聞こえた。先に空気が裂けて、次に肉と骨がぶつかる音。あれは速度が乗り切ってる証拠だ。筋力だけじゃ出ねぇ。
そうか……重心だ。重心を、蹴り足じゃなく“腰”に残してる。だから体重そのものが、遅れて、最後に叩き込まれる。
くそ……だから巨体が浮く。持ち上げてるんじゃねぇ、地面から“切り離してる”んだ。
ハリマオの顎が跳ねた瞬間、首が耐え切れてねぇ。頸椎の角度、完全に死角だ。あの高さ、普通は避けられる。だが、あの女、わざと一拍遅らせて誘ってやがる。ガードが下がる瞬間を、最初から読んで……。
偶然? 冗談じゃねぇ。あれは設計だ。戦い方が、プロのそれだ。
……まずい。
いや、まずいのは俺の心臓の方だ。鼓動が速ぇ。指が震えてる。
だが、目は離せねぇ。分析しろ。生き残りたきゃ、理解しろ。
次が来る。軸足がもう一度、床を噛んだ。二発目は連続じゃない、角度を変えてくる。たぶん回し蹴り――いや、違う。あの腰の沈み……縦だ。縦に切り上げる。
くそ……狙いは顎じゃねぇ。顎を囮にして、こめかみだ。人体で一番“割れやすい”場所を、最短距離で――。
やめろ、ハリマオ……そこに立つな……!
……ああ、あああ……やっぱりだ。
見たかよ……脚が、鞭みてぇにしなって、最後に“硬さ”だけ残して当たった。柔と剛の切り替え……達人の域だ。
結論は一つだ。
あの女子高生、ただの喧嘩慣れじゃねぇ。
――“人を倒すための技”を、知ってる。
