Artist's commentary
あまやどりぐる①
前 これが最初
次 pixiv #42683636 »
ようやく長い冬が終わり、啓蟄という言葉が示す通り冬眠から覚めた虫や動物があちこちで見られるようになった。
多くの人間にとってもこれからが忙しくなる時期だろう。
だというのに、今日は空から陰鬱な雨が絶えず降り注いでいる。
まだ昼下がりだが、やけに暗いし寒い。
仕事をする気も失せたあなたは、川のほとりに建てられた家の中で、毛布に包まりながら春眠を貪っていた。
外の雨足がいっそう強くなった。
その時、濡れた地面を走る足音と、「うわぁー」とか「ひえー」とかいう幼い子供の悲鳴が聞こえたかと思うと、家の木壁にどん、と当たって止まった。
「酷いことになっちゃった…油断したなぁ」
隙間だらけの木壁からは遠慮なく外の声が漏れ聞こえる。
あなたは億劫そうに毛布から這い出ると、めっきり立て付けの悪くなった戸を引き開けて外を見た。
「! あっ、ごめんなさい、人がいるとは思わなくて」
そこにいたのは、里でも時々見かける妖怪だった。
確か名前はリグルとか言ったか?
里の通りで遠目に見かけた時には男にも見えた妖怪の少女(濡れた服から透けて見える体つきは明らかに少女のそれだ)は、ばつが悪そうな顔で言い訳をしている。
おたおたするリグルを眺めていると、ややあって彼女は上目遣いにあなたを見つめて来た。
「その、止むまで雨宿りさせてもらって…いい?」
1. 別に構わんけど、俺も隣いいか?
2. 人んちの屋根下使うからには、払うもん払ってもらわんとな…
3. とりあえず中に入れや、濡れたままじゃ風邪ひくだろ
