Artist's commentary
練習14
描いた日:6月22日
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「ダニング=クルーガー効果」というのをご存じでしょうか。
能力や専門性、経験などが低い人は、自分の能力を過大評価する傾向がある……という認知バイアスのことを言います。
自分は初心者から少し経った時、美術予備校にお邪魔したことがありました。
その時コンクールでして、鉛筆での石膏デッサンと、透明水彩絵の具を使った着彩があったんです。
制作途中、隣の人の作品を見て、大変恥ずかしいのですが、「なんだ大したことないじゃん、まあこの人よりは順位は上かな」と内心で思っていました。
さらに全体の人たちの作品を見渡して、「まあ上位は無理でも、上から30%以内の順位には入れるかな(キリッ)」と。
要は、人に「へたな絵ですみません」と口では言いながら、内心では自分は結構うまいと思ってる的なよくあるアレだったんですね。
コンクールが終わり、順位発表が行われました。
自分はすました顔でいましたが、内心で「マジか……」となりました。
普通に下位だったのです。メッチャ普通に下位でした。
心のどこかで期待していた何かは打ち砕かれ、現実を見せつけられた感じでした。
なにより驚いたのは、大したことないじゃんと思ってた隣の人が、一桁台であり、上位10%に入ってる人でした。
その後も似たような経験が大量に積み重なり、流石に自分も気づきだして、「自分の目が間違ってるんだ……」と疑えるようになりました。
しかしそこからが大変で、袋小路でしたね。
イラストでも同じで、ある売れてる成年向け同人作家の方がいて、その方は非常にシンプルな絵柄だったんです。
で、当時の自分、これまた恥ずかしながら、「なんだ、こんなんで売れるんだ。なら自分も将来描いたら売れるかな」って思ってたんです。
でも今はわかるのですが、その方、線などがベラボーに上手いんですね。
自分が描く側になり、当時よりはレベルが上がったから、ちゃんとわかってきた感じになって。
シンプルな方が本質がつまっていて、リアルに描くよりよほど難しいのです。
しかもその作家さんは自分の需要をちゃんと理解していて、それに沿ったものを提供してるから、わざとそういう絵柄にしていて(「うまい」と評価される絵なんか最初から描こうとしていない)、作家性も出しているんだ、ということに気づいたのもだいぶ後でしたね。
当時の自分の思考の浅さは本当に恥ずかしいです。
他人の絵を内心で上から目線で批評し、それと同時になんで自分の絵が評価されなかったのかわからず、そのくせ他人の目ばかり気にして、自己肯定感はどんどん下がり、きわめて幼稚でした。
一言でいえばガチの嫌な陰キャだったんです。生産する側のマインドになれておらず、色んなことの自覚が足りてませんでした。
今はマインドセットに関する情報も得て知識をつけ、自分と向き合えるようになってきましたが、美術予備校にお邪魔していた時はメンタルが本当にやばかったですね。
絵に限らず何でもそうだと思いますが、自分の能力を過大評価しているうちは(過大評価していると自分で気づけていないうちは)、まだ自分のレベルは全然大したことないです。
自分をありのままより高く見積もって他人を見下したり過剰に自虐したりしてるうちは、自意識や目の前の感情に振り回されてるので、だいたいその世界における平均レベルより大幅に下なんじゃないかなと思います。
そういう思考になってる時点で自分のすべきことに集中できていないし、その世界の上のレベルについて知識がないということだからです。
本当の意味で自分を客観的に見られるようになるのは、色んな知識をつけ、ありのままの自分をちゃんと受け入れられた時かなと。
ちなみに前述した隣だったその人は、その後も凄まじい勢いでうまくなり、何回か講師が「言うことがない」作品を提出するなど、安定してクラスで常にトップにいる人になっていました。
他人の噂話や自虐なんか一切せず、自分のことにめちゃくちゃ集中している人でした。
いま思うと、講評で見られていたのは、絵ではなかったんですよね。
絵を通して、描いたその人のマインドを見られていたというか。
その作者の目には世界がどう見えているのか、大袈裟ではなく、そういうところを見られてたんだなと思います。
あの経験は非常に大きく、時間がたつごとに財産になりました。
なんだかんだ、自分を見つめるうえで、経験しておいてよかったなと思います。
すみません、どうでもいい話で……。
練習絵シリーズを通して、ふと思い出したのです。
内面も成長していけたらいいなと思います。
