Artist's commentary
DRIVE-THRU
なんかもう…注釈やキャプションに書きなぐる謎の怪文書が前提になりつつある今日この頃…
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赤いイタリア製のオープンスポーツカーが、凪いだ湖のような国道を軽やかにクルーズする。
すらりとした手で舵を握るのは若く端麗の女。
少し空気は暑いがその表情は涼やかで、切れ長の目はまっすぐ前を見据えている。
その横顔に、信号で並んだバイクの男の視線がちらちらと向けられる。
助手席で丸くなる猫にはまるで意識が向いていない。
(鶏沼では働き者のアヒルも、今は怠け者の猫である。)
アメリカンタイプの大型バイクに跨る男は大柄で、信号待ちの間も背筋は崩れない。
分厚い肩の革ジャンは年季が入っていて、いかにも硬派といった風貌。
だがその内心、男はバレたらダサいなどと思いつつも、その視線はつい運転席へと滑り、気付けば二度――その横顔を追っていた。
無論、運転席の女は気付いている。
だが、そんな男の視線には慣れたもので知らん顔だ。
信号が青に変わると、車は軽快に発進し、三度目のチラ見を試みたバイクが一呼吸遅れてそれに続く。
しばらくすると、女は左車線に舵を取って、そのままロードサイドのドライブスルーへと滑り込んだ。
男はほんの少し面食らう。
車が入っていったのは見慣れた赤い看板。
白髭のおじさんロゴでおなじみのフライドチキン店だ。
あのクールな美女とフライドチキンの組み合わせの妙。
しかもその美女が左ハンドルのドライブスルーで身を乗り出す…そんな少し間抜けな姿を想像した。
ヘルメットの下。男の口元はわずかに緩むが、その表情は高架線の影が覆い隠す。
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フライドチキン店KF●の注文口。
おなじみの油とスパイスの匂いが漂うそこに、先程の赤いスポーツカーが流れるように横付けされた。
だが、車幅感覚が微妙なのか、車とマイクには若干の距離がある。
そのうえ左ハンドルであるがゆえに、マイクにはなお遠い。
「まったく、一旦寝たら起きないんだから…!」
女がつぶやきとともに助手席へ身を乗り出す。
窮屈な様子でダッシュボードに手をつくと、垂れた髪が寝顔の鼻先をくすぐった。
幸せそうな寝顔に水を差すのが忍びないと感じたからなのか、同乗者に注文させればいいものをあえて自らが行う。
胸に敷かれた上に、眼前で大きめな注文の声。
そこでようやく猫は片目を開く。
「受け取りはあんたがしてよね、もうっ。」
口調は強いがどこか柔らかく、緊張感がない。
だが、だるそうに伸びをする猫の表情はさらに緊張感がない。
それは寝起きだからというよりも、常の表情である。
目は半開きで、口元もだらしなく半開き。
整った顔立ちもこれでは台無しで、女と同い年のはずだが、まるで中学生にしか見えない。
「ともみんさー、なんで屋根あけてんの?」
発想の唐突さも見た目に違わず中学生並。
だが付き合いの長い女は慣れたもの。
「あんたのクルマみたいにフライドチキン臭くなるでしょ。」
アホな子供に応じる母親の風格である。
「いいね。」
「良くない。」
